わかもののまち静岡・提言書

1. はじめに

静岡県の人口流出数が全国第2位であることが、大きく報道されました。特に、若者世代の流出は激しく、未来の静岡を担う人材が確保できないことが大きな課題と なっています。

これに対して、若者目線でアクションを起こしていくことを目的に、市内の大学生を中心にはじまったの が、「わかもののまち・静岡」実行委員会です。若者が住みたい、住み続けいたいまちを、若者自身の手で つくり上げていくことを基本に、「すべての若者が尊重され、多様な関わり合いのなかで、地域への愛着が 育まれるまち」を理念として掲げています。

※本提言は、市内の若者から静岡市に対する意見を広く集め、取りまとめをしたものです。 ※本提言では、若者の定義を 13 歳から 25 歳とします。

2. 私たちが大切にしたいこと

【基本理念】すべての若者が尊重され、 多様な関わり合いのなかで、地域への愛着が育まれるまち

13 歳から 25 歳の若者が地域活動に関わることはとても重要です。若者たちは、これからの静岡を担う世 代ではなく、今の静岡のつくり手であるからです。青年期から成人期への移行期であるこの時期に、地域で の活動に取り組むことで、静岡への愛着を醸成し、これからも住み続けたい、住んでみたいまちを自らの手 でつくりだしていきます。

欧州では、同様の世代の若者たちがまちの意思決定に一定の影響力を持っています。例えば、若者の全国 レベルの団体が存在し、政府や自治体への働きかけを行っています。地域レベルでも、若者たちの意見でユ ースセンターと呼ばれる若者の放課後活動の施設がつくられた事例もあります。自分たちで話し合って決め たことが、実際にまちの形になっているのです。

これは海外に限った話ではなく、国内でも若者が積極的に地域活動に関わっている事例があります。例え ば、高知県高知市では、「こうちこどもファンド」という 18 歳以下の子どもを対象としたまちづくり助成 金があります。多くの子どもたちが等身大のアイデアでまちづくりに関わっているだけでなく、助成の審査 にも子どもが参画しています。同様に、石川県金沢市では、学生の金沢への愛着を育むことを目的に「金沢 市における学生のまちの推進に関する条例」が平成 22 年から施行され、学生らしいユニークなまちづくり が年々規模を拡大させながら行われています。

自分たちの思いを形にしていくことで、まちの担い手になっていく。わかもののまち・静岡は、「すべて の若者が尊重され、多様な関わり合いのなかで、地域への愛着が育まれるまち」を目指します。若者だけの まちを目指すのではなく、地域の中にいる多様な人と若者が関わり合いながら、静岡への愛着を醸成できる 機会や環境を整備していくことを目的にしています。

 

3. 提言の全体像

【基本理念】

    すべての若者が尊重され、多様な関わりのなかで、
         地域への愛着を育むまち

【提言の柱】

本提言は、大きく3つの柱を軸にしています。

1. まちの意思決定に関わる環境づくり

2. すすんで地域に参画できる環境づくり

3. 若者と地域をつなぐネットワークづくり

各柱には、6つのねらい、8つ具体的な事業等の提案を掲げています。すべての若者にとって、住みたい、 住み続けたいまち・静岡を、これからも長く静岡を担っていく若者自身が参画をしていくことに大きな意味 があると我々は考えます。

より多くの若者が地域に参加・参画できる機会を整え、若者の市民性を育て、自らの夢や目標が見つかり、 それに向かっていける環境もある。すべての若者がイキイキと活躍できる「わかもののまち・静岡」の必要 性を強く訴えます。

 

4. 提言の具体的内容

第1の柱 すすんで地域に参画できる環境づくり

課題と分析

  •  静岡市内には、20を超える地域活動を行う若者団体が存在しており、全国的にもこれほどの数の地域 活動に関与している若者団体があるのは珍しいです。しかし、若者だけで運営していることから、活 動の求心力は弱さや、地域に入り込む難しさが課題になっています。
  •  市内の若者団体には、全国レベルの表彰を受けている団体なども存在しています。しかし、その活動 の基盤は弱く、立ち上げから数年で無くなってしまう団体も少なくありません。
  •  地域に貢献したいという思いを持っている若者が多いことは内閣府の調査から明らかになりましたが、 若者が地域に貢献しようと行動を起こすにはハードルが高い現状があります。

    提言

1. 若者の活動支援の拡充をすること

【提言】「わかもののまち・静岡」の宣言

  • 静岡市として、「わかもののまち・静岡」を推進することを宣言することを求めます。若者 の活動を積極的に支援することを、市内外の若者に広く認知してもらえる効果が見込め、地 域活動などに関心のある若者が静岡市に集まります。

【提言】「静岡まちづくりわかもの会議」の発足を目指すこと

  • 静岡市における若者のまちづくり活動の母体となる組織の立ち上げを行い、行政など、各機関との連携を結ぶことを求めます。この組織は、市内の若者が地域に参画できるきっかけづ くり、若者同士・若者と地域が結びつくイベントの企画等を行います。また、「しずおか・ 若者フォーラム」(第2の柱)の運営も行います。この組織には、ユースコーディネーター (第3の柱)がアドバイザーとして支援を行います。(例 金沢市 金沢まちづくり学生会議

2. 若者が地域に参画しやすい環境づくりを行うこと

【提言】 若者の地域活動拠点をつくること

  •  若者と地域住民との交流、情報交換等を通じて若者とまちとの関係を深めるとともに、自主 的な 活動支援を図る拠点を街中につくることを提言します。
  •  拠点は、空き店舗や廃校などの利用を提言します。
  •  自習スペースや、バンド・ダンスの練習場所としても利用できる設備など、幅広い若者の居場所になる拠点となることを求めます。またこの拠点で、大学生世代が中高生世代の学習支 援を行うことも提言します。
  • この地域拠点では、様々な活動のミーティングスペース、イベントスペースなどとして利用 できるようにし、ユースコーディネーター(第3の柱)を常設します。ユースコーディネー ターに、若者は活動全般の相談をすることができ、課題となっている求心力の弱さの解決を 図ります。また、若者が地域に参画する上での、窓口としての役割も兼ねます。(例 北欧 ユ ースセンター、金沢市 金沢学生のまち市民交流館)

【提言】若者の活動への財政支援

  • 様々な行政課題を解決する事業、地域を元気にする事業、新たな分野へのチャレンジ事業など、若者団体からの活動の提案に対する助成の枠組みの確立を求めます。助成条件として、 公開プレゼンテーションを行い、若者も審査員として参画を求めます。(例 高知市 こうち こどもファンド

第2の柱 まちの意思決定に関わる環境づくり

課題と分析

  •  若者団体及び、個人が地域(NPO、行政、学校など)との協働事業を行う事例は出ていますが、単年 度ベース、事業ベースでの関わりのみで継続性に欠けるのが課題になっています。
  •  若者が市政や地域活動に関わる機会は、まちづくりや環境など、特定のテーマに限られているものが ほとんどで、参加・参画できている若者がまだ少ないことが課題になっています。
  •  若者を支える個人や団体は存在しても、制度として確立しておらず、長期的な若者支援ビジョンがあ りません。

    提言

    【提言】

  • 静岡市が主催し、「しずおかまちづくり若者会議」が運営を行う、「しずおか・若者フォー ラム」を年一回、実施することを求めます。

    若者が参加をし、まちづくり、国際、環境、教育など、テーマ別に分かれ、集まった意見を 元に議論をし、今後の静岡について考えていきます。議論された内容を、学校や地域、行政 が今後の方針として、取り入れる検討をし、若者の意見をより取り入れる市政運営を目指す ことを提言します。(例 ドイツ・ベルリン 子ども若者フォーラム

2. 「わかもののまち・静岡」を制度として確立すること 「わかもののまち・静岡推進条例」の策定の検討

提言の内容を盛り込んだ「わかもののまち・静岡推進条例」の策定の検討を求めます。条例 のなかに、「わかもののまち・静岡」を位置付けることで、持続的な若者参画のまちづくり を目指し、長期の視点に立った若者支援の確立を提言します。(例 金沢市 学生のまち推進 条例(略称)

静岡市青少年問題協議会への若者委員の参画の義務づけ
静岡市の青少年に関する議論に、当事者である若者が参画する必要があると強く思います。

高校生世代が委員として参画するも視野に、若者委員の参画を制度として確立することを求 めます。

1. 若者の声をまちに届けること
「しずおか・若者フォーラム」の実施

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第3の柱 若者と地域をつなぐネットワークづくり

課題と分析

地域に入りたい若者、若者を求めている地域があるにもかかわらず、窓口が確立されていないことか ら、そのマッチングができていない現状にあります。

若者のみで運営していることから、若者団体の持続性や発展性は弱く、地域で若者を支える仕組みづ くりが求められます。

提言

1. 若者と地域の窓口を確立すること ユースコーディネーターの設置

「静岡まちづくり若者会議」の支援、若者の活動拠点での相談業務など、若者の地域活動全 般の支援を行うユースコーディネーターの設置を提言します。また、ユースコーディネータ ーは、地域と若者をつなぐ窓口としての役割も果たし、地域側と若者側のお互いのニーズの マッチングにも従事します。(例 北欧 ユースワーカー、金沢市 まちづくりコーディネータ ー

2. 地域と共に育つ「わかもののまち・静岡」を目指すこと 学校や地域、行政によるわかもののまち地域協議会の設置

若者参画のまちづくり全般の評価及び、今後の方針の検討などを行うことを目的に、「静岡 まちづくり若者会議」(第1の柱)の代表者、学校関係者、地域住民、行政による地域協議 会の設置を提言します。地域の支えの上に、「わかもののまち・静岡」の推進が必要です。

地域協議会は、約2ヶ月に1度の会議を重ねます